読書感想文

坂口三千代『クラクラ日記』(1967年作品)

 てっきり昔読んだ本だと思っていたのだが、何を勘違いしたものか、初読であった。坂口安吾の妻・坂口三千代による、安吾との出会いから死別までの生活をつづった自伝的エッセイ。  題名が軽いエッセイものの雰囲気を醸し出しているので油断していたの...
読書感想文

九段理江『東京都同情塔』(2024年作品)

 ふだんは昔の小説ばっかり読んで、古臭い言い回しを嬉々として覚えて好んで使っているのだが、あまりにも昔風に偏るのも現代人としてのバランスを欠く、ってことでたまには新刊本も読みたい。作中で文章生成AIを使っているとか、芥川賞にしては珍しく...
随想

多動的随想02 – 「心の奈落」と「高所恐怖症的な空想」について

 高層ビルのエレベーターに乗っている時、自分がとんでもない高所まで持ち上げられているうえ、この床の下は何も支えるものが無い穴である、という事実をうかつにも考えてしまい、もしこの箱が突然落下しはじめたらどうしよう、などと心配するあまり、恐怖で...
随想

多動的随想01 – ミニマリズムと多動について

 ミニマリストが精神と時の部屋のような何もない白い空間に住みたがるのは、本人が“思考の多動性”に悩んでおり、その治療のためではないかという仮説に、最近思い至った。  私は、検査などはしていないのだが、おそらくADHDやASDなどの属性を抱...
読書感想文

矢田津世子『神楽坂・茶粥の記』

 矢田津世子の作品を読もうとする人の多くが坂口安吾経由だと思う。私もご多分に洩れず、直接的に矢田津世子のことが語られる『二十七歳』『三十歳』を読んで好奇心を刺激され、安吾作品への理解を深めるため読んでみることにした次第である。  矢田津...
読書感想文

横山勲『過疎ビジネス』(2025年作品)

 河北新社という東北の地方新聞の記者が、過疎自治体をに寄生する"公金チューチュー"、というより"公金ロンダリング"といったほうが良い、コンサル会社の悪徳ビジネスを暴くノンフィクション。ジャーナリズム魂を見せつけられる内容で、オールドメディ...
読書感想文

上野英信『出ニッポン記』(1977年作品)

 昨今、20代くらいの若手世代の就活は売り手市場で楽勝、一部の企業では初任給も爆上げ、といったことが起こっていると聞く。一方で我々世代はというと、仕事がなかなか見つからないのはもはや20代の時と変わらずな伝統芸で、見つかったとしてもいま...
読書感想文

小林多喜二『防雪林・不在地主』

 電車通勤の2時間は、プロレタリア文学を読むに限る。理由は色々あるが、現代の労働環境や資本主義社会の奥底に隠された獰猛さを改めて認識させられるからだ。いや、隠されているのはごく一部で、多くの会社では薄皮一枚の下にグラグラ煮え立っているのが...
読書感想文

勝小吉『夢酔独言』(1843年作品、2015年講談社版)

 勝海舟の父、江戸の不良旗本・勝小吉の自叙伝。坂口安吾の「青春論」で以下のように魅力的な紹介で手に取った本。  僕は先日勝海舟の伝記を読んだ。ところが海舟の親父の勝夢酔という先生が、奇々怪々な先生で、不良少年、不良青年、不良老年と生涯...
読書感想文

寺尾紗穂『日本人が移民だったころ』(2023年作品)

 昨今、今さらかよと溜息をついてしまうくらい盛んに「氷河期世代対策」の政治プロモーションが行われている。  自分もそれに焚きつけられて色々と考えてしまい、過去に下記のような投稿もしている。 ・「氷河期世代の船」に、死ぬまで乗船し続ける運...