読書感想文

上野英信『出ニッポン記』(1977年作品)

 昨今、20代くらいの若手世代の就活は売り手市場で楽勝、一部の企業では初任給も爆上げ、といったことが起こっていると聞く。一方で我々世代はというと、仕事がなかなか見つからないのはもはや20代の時と変わらずな伝統芸で、見つかったとしてもいま...
読書感想文

小林多喜二『防雪林・不在地主』

 電車通勤の2時間は、プロレタリア文学を読むに限る。理由は色々あるが、現代の労働環境や資本主義社会の奥底に隠された獰猛さを改めて認識させられるからだ。いや、隠されているのはごく一部で、多くの会社では薄皮一枚の下にグラグラ煮え立っているのが...
読書感想文

勝小吉『夢酔独言』(1843年作品、2015年講談社版)

 勝海舟の父、江戸の不良旗本・勝小吉の自叙伝。坂口安吾の「青春論」で以下のように魅力的な紹介で手に取った本。  僕は先日勝海舟の伝記を読んだ。ところが海舟の親父の勝夢酔という先生が、奇々怪々な先生で、不良少年、不良青年、不良老年と生涯...
読書感想文

寺尾紗穂『日本人が移民だったころ』(2023年作品)

 昨今、今さらかよと溜息をついてしまうくらい盛んに「氷河期世代対策」の政治プロモーションが行われている。  自分もそれに焚きつけられて色々と考えてしまい、過去に下記のような投稿もしている。 ・「氷河期世代の船」に、死ぬまで乗船し続ける運...
仕事について

社会に不要な「氷河期世代」

 氷河期世代とは、つまるところ過剰人材の要らない世代である。  これは、自分自身の実体験から思うことだ。  私は新卒時の内定率が2人に1人だった2003年度卒世代。しかし、大学在学時は適応障害と神経症に悩まされ、過酷な就活サヴァイヴァルに参...
読書感想文

坂口安吾『花妖』(1947年作品)

 東京新聞に連載された安吾初の新聞小説にして、安吾作品によくある未完長編。  家族と別居し、終戦後も防空壕に住み続け皮肉とニヒリズムの果てに浪漫を夢見る自称「ミイラ」の弁護士・木村修一。許嫁に裏切られ、妹にも裏切られ当てにしていた父親にも裏...
読書感想文

成田悠輔『22世紀の資本主義 やがてお金は絶滅する』(2025年作品)

 前作『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』は割と軽快に読める本だったので油断したが、今作は私のような不勉強者にとっては難解であった。特に軸となっている「アートークン」と「招き猫アルゴリズム」の概念がまるで...
読書感想文

J・D・ヴァンス『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(2016年作品)

 日本には、ことあるごとにアメリカの事例を持ち出してくる「アメリカ出羽守」が大勢いる。「アメリカ」を良い例として紹介したあとで「それに引き換え日本は……」と続き、アメリカの良い例を日本にも導入するべきだと主張してくる人たちだ。それでまあ本...
読書感想文

堀越耕平『僕のヒーローアカデミア』に見える、社会の包摂力について

 ヒロアカの世界における「悪(=敵)」の定義は「群れ(=社会)に対し危害を加えるもの」である。さらに「悪がなぜ群れに危害を加えようとするのか?」の原因を「特定個体を排除する群れの習性」に求めている。  「みんな仲良くしようよ」という平和的な...
読書感想文

社會部部長『あの国の本当の思惑を見抜く 地政学』(2025年作品)

 毎年夏になると出てくる反戦コンテンツ。繰り返し繰り返し「戦争のひどさ」を伝えてくる。良い加減うんざりである。戦争を知らない子供たちに見せるのはいい。戦争を起こさず平和を愛する大人になってほしい。しかし、こちらはもう「ひどさ」は分かって...