小説

読書感想文

九段理江『東京都同情塔』(2024年作品)

 ふだんは昔の小説ばっかり読んで、古臭い言い回しを嬉々として覚えて好んで使っているのだが、あまりにも昔風に偏るのも現代人としてのバランスを欠く、ってことでたまには新刊本も読みたい。作中で文章生成AIを使っているとか、芥川賞にしては珍しく...
読書感想文

矢田津世子『神楽坂・茶粥の記』

 矢田津世子の作品を読もうとする人の多くが坂口安吾経由だと思う。私もご多分に洩れず、直接的に矢田津世子のことが語られる『二十七歳』『三十歳』を読んで好奇心を刺激され、安吾作品への理解を深めるため読んでみることにした次第である。  矢田津...
読書感想文

小林多喜二『防雪林・不在地主』

 電車通勤の2時間は、プロレタリア文学を読むに限る。理由は色々あるが、現代の労働環境や資本主義社会の奥底に隠された獰猛さを改めて認識させられるからだ。いや、隠されているのはごく一部で、多くの会社では薄皮一枚の下にグラグラ煮え立っているのが...
読書感想文

坂口安吾『花妖』(1947年作品)

 東京新聞に連載された安吾初の新聞小説にして、安吾作品によくある未完長編。  家族と別居し、終戦後も防空壕に住み続け皮肉とニヒリズムの果てに浪漫を夢見る自称「ミイラ」の弁護士・木村修一。許嫁に裏切られ、妹にも裏切られ当てにしていた父親にも裏...
読書感想文

坂口安吾『金銭無情』(1947年作品)

 安吾の作品には失敗作も少なからず存在しているが、この作品は、物語の途中で突如語り手が登場し話を端折る場面があったりすることから、まさに失敗作なのだろう。しかし、失敗作=つまらない作品、というわけではない。「戦後のドサクサ」とはよく言われる...
読書感想文

小川洋子『揚羽蝶が壊れる時』(1989年作品)

 学生時代はとにかく本を読んだ。国文学生だったからでもあるが、止むに止まれぬ思いを抱えて読書していたように思う。端的に言えば精神不調。人との関係性をうまく構築出来ないことに悩みを抱え(同じ学生に声をかけることすらままならない)、「行人を眺め...
読書感想文

芥川龍之介『或る阿呆の一生』(1927年作品)

『ドラゴンクエスト7』という、非常に後味の悪いショートストーリーがたくさん詰め込まれた名作鬱ゲームがあり、世間の評判をよそに私は割とドラクエ7が好きだが、その中で村人全員が石にされてしまった村の話があり、夜になって石になった村人に話しかける...
読書感想文

芥川龍之介『歯車』(1927年作品)

 ブログ名を『40代派遣社員の読書感想文ブログ』という、いかにもプロレタリアートなムード香るタイトルに変更したそばから、プロレタリアどころかいきなり『歯車』ってのはメンタル大丈夫ですか。と我ながら自嘲せずにはいられないが、まあここ最近、学生...